保護者の皆様、まもなく空も木々の緑も美しい五月(皐月)となります。この季節は藤の花、薔薇、雛罌粟(コクリコ)など古えより和歌、俳句に歌われる日本の花の美が新緑を背景に映える時期です。幼い子どもは音や色彩に移ろいに鋭敏な感性を持っていて、それ故に幼い頃に聴いた音楽や目にする自然の姿に影響を受けます。
ああ皐月 仏蘭西の野は 火の色す 君も雛罌粟(コクリコ)われも雛罌粟(コクリコ)
―与謝野晶子ー
藤なみの 花の紫 絵にかかば こき紫に かくべかりけり ―正岡子規―
くれないの二尺伸びたる薔薇の芽の針やわらかに春雨の降る ―正岡子規―
幼い子は、目にした小さな道端の野の花や木の実に目をとめ、空の雲を様々なイメージに見立てる、新鮮な想像力を持っています。子どもが優れた絵本に夢中になるのも、同じで、お話のページの舞台に王子様やお姫様と一緒に溶け込み、入ってゆけるのです。日々、お子さんは、それを表しますが、大人のように言葉で上手に伝えられないので、小さき声に時に耳を傾けてあげるとお子さんの自我はその心の触れ合いを通して成長していきます。